「テラ・・・ナニさんでしたっけ」
「寺尾さんです。
イケメンの寺尾です。
寺尾聰のテラオです。」 ここで逆鉾、霧島の名前が浮かび話題に上げようとする気持ちを抑えて お話に耳を傾ける。 1日目が終わり、明日は雨かなぁと心配する余力もあまりなくホテルで座り込んでいるところへ電話がなります。神戸のカリスマ店長からです。 大阪にいるんだなと浸りながら電話に出ると、明日助っ人が来てくれることになったと説明をはじめたのです。 「お時間はいつくらいからがいいですか?」 「来ていただけるのでしたらご無理のないお時間で大丈夫です。」 「お伝えして確認したらDMしますね」
10分後に
「せっかくなので始まる頃に着くように向かうそうです。 もしお手伝いが必要ないようでしたら そのように言っていただけたら退散しますのでとのことです。」 とお返事をいただいた。
いいのだろうか。こんなに良くしていただくような人間ではないのですワタクシ。 寺尾さんはなんの見返りも求めず、ただ手を貸してくださるというのです。 しかも一日、しかも電車で1時間以上もかかるところに、しかも雨予報
しかも予定が変更となりお時間が空いたからとご連絡をくださって・・・ こんな素敵な人間が現実にいますか?
こちらのストールは結局間に合わなかったものです。
普段の自身の言行がなんだか恥ずかしくなります。
もしかして妖精かもしれない。
純粋に見ず知らずのこの私に力を貸してくださるなんて、そんな人が存在する? いやいや・・・でも本当に来てくださるなら、なんて助かることでしょう。
「良かったありがとう」と安心してそのまま倒れ込むように床につきました。 二日目の朝、雨予報ですがあたたかい日が射しています。 それでも雨対策をと昨日のディスプレイを大幅に変更することから始まりました。 ほぼ一から作り直しです。 作品はなるべくテントの中央にまとめます。吊るすティスプレイも内側へ移動、そしてバッグヤードが使えないので荷物は全てテント中央の机の下へしまいます。
それらの骨組みをしてから作品を並べます。
9時、一つも作品が並ばずとも骨組みはなんとかなってきました。 あと1時間で仕上がるかという時に、リュックを背負った可愛らしい女性が控えめにこちらへ歩いてきます。 今にも宙に浮かびそうな穏やかな優しい佇まい、妖精でしょうか。 「なんでも言ってください」とおっしゃて自らゴミ袋を作りサッと丸めたガムテープと、切れた輪ゴムをまとめビニールを敷いて荷物を置いて、腕まくりをして控えめに尋ねてくださいます。 妖精がきました。本物です。 こんな素敵なホモサピエンスが月に一度はビール飲んで床に寝てしまう私のそばに来てくれるわけはありません。 10時、雨が降ってきました。
「雨だから私ここに来られたので・・・」
そうなんですよね。雨予報なので予定が変更になり来てくださった。ザンザン降り注ぐ雨でも賑わう会場の様子に雨だから私は救われたんだなと実感しました。
そこから1日どれほど助けられたことでしょう。
結局、撤収まで手際よくなさってくださって気づけば 「あれっ私あまり疲れていない」 はじめてお会いした方と、全く気を使うことなく1日を過ごしたのですね。どれだけ甘えたのかは計り知れないけれど、元気な自分がそれを証明しています。
イベントではこういう奇跡のようなひとときがおとずれます。 苦しくて悔しくて不甲斐なくて、それも受け入れて出展するのですが こうしたかけがえのないご褒美もあります。 一人で回していた1日目も松本で出会ったお客様が 麦茶を差し入れしてくださったり(暑い1日で自販機がほぼ売り切れでした)
勤めていたときの同僚が忙しい中顔を出してくださったり 母校の先輩が尋ねて来てくれたり そして何よりも見につけて手にとってご購入くださったお客様にであえて どの方も嬉しそうにお持ち帰りいただいたこと、とっても嬉しくてありがたいことです。
二週間前の工房からの風も寺尾さんと全く同じタイプの方が二日間サポートしてくださいました。
この支えは決して当たり前ではないことなのです。
それがここのところぐっと身に染みます。一人でできることはなるべくやりきろうと、そのほうが楽だと思っていたけれど、こうした出会いや素敵なサポートのおかげで楽しく仕事ができることを知りました。 いつか自分の方がサポートする立場になったとき、少しでもこのお二人のようにその場にいることができたならと思いました。お気遣い、佇まい、全てにおいてお二人は私にとって本当に良いお手本となりました。
工房からの風
いらしていただいた皆様ありがとうございました。
灯しびとの集い
また来年も来られますように
お世話になりました。
皆様 ありがとうございました。
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